特集 響きあいのフェスティバル

 

クラブEKO広報誌「ブレティーネン」No.11、1998年5月発行 掲載記事


 1998年2月15日、東京五反田<ゆうぽうと>で、観客と一体となった熱いステージが展開されました。EKOが、ギャーテーズが、自然生クラブが、夢人間が、そして奏年隊にMyDoが、魅力あふれるパフォーマンスで、その場に居合わせた全ての人の心を一つにしてしまいました。

  ロックあり、ハーモニカあり、和太鼓もフリージャズもダンスも・・・。音楽の自由性を最大限に生かし、グループ独自のスタイルを作っていった彼らのステージには、人々の心を解き放つ不思議な魅力が満ちあふれていました。


・リハーサル

 歩いているだけでも汗ばむような陽気の前日とはうって変わって、雪の朝を迎えた。ぶち抜けるようなパワーで楽しんだ前日のパーティの余韻をよそに、音響や照明のスタッフのてきぱきした動きでステージの準備が進む。裏方のボランティアスタッフも早朝から大勢かけつけ、出演グループやスタッフへのサポートもかいがいしい。リハーサルと並行して音響と照明のチェックが進み、各グループのテンションも次第に高まっていく。

 出演と裏方全員の顔合わせ。グループの挨拶に続いて、司会の小室等さんが「頑張るというんじゃなくて、今日は、大いに音楽を楽しみましょう。僕も楽しみにしてます」とエールを送る。EKOの大滝さんはテレビのオリンピック観戦の報告。原田選手のK点超えの大ジャンプを興奮した面もちで語る。もちろん誰もテレビは見ていない。大滝さんの登場で、本番を控えた緊張感の中にも自然と和やかな雰囲気が広がっていった。


・オープニング・MyDo

 開場前から入り口には寒さに震える人の列が出来ていた。会場に足を運んでくださった方々のフェスティバルに対する期待感も伝わり、それがステージの熱演を引き出すに違いないことを確信した。

 開演の合図と共に、ステージ上手から夢人間がゆっくりと歩み出て、一人一文字ずつの布きれを広げていく。スポットライトに照らし出された文字は「響・き・あ・い」。

 続いて腹に響く強烈なドラム。オープニングはMyDo(まいど)のロックサウンドである。女性ドラマーの本当に力強いビートに観客一同が引きつけられ、フェスティバルのムードは一気に高まった。 

 自分たちの生活の中で自分たちの生活を歌うオリジナルの数々。ロックすることで疲れをいやし、明日へのエネルギーを生み出している。アマチュアであることに胸を張るMyDoサウンドの堂々たる響きには、音楽することの素晴らしさと、彼らのピュアなソウルにふれた思いで、胸が熱くなった。その思いは決して私一人だけのものではないだろう。


・奏年隊・夢人間・自然生クラブ

 二人のおじさんと彼らに寄り添うギターの若者が楚々として登場。奏年隊である。オクラホマミキサ、君といつまでも、浜千鳥、津軽海峡冬景色など、次から次へとおなじみのメロディーが飛び出す。唱歌、演歌、ポップス、なんでもござれ。ただただ、楽しければいいのである。

 そういえば、昨日会場に到着してから、奏年隊の居るところハーモニカの音が絶えたことはなかった。飄々とした風貌とそれにふさわしい何の力みもないやわらかな音色。客席からは手拍子、そして歌声が、次第に大きく広がっていく。

 続いて、夢人間のパフォーマンス。緩やかな音楽に滑り込むように一人また一人とステージ両袖から中央に進み寄る。吸い込まれるような不思議な気分で息を飲み、見入る。人の体の自在さと不自由さが交錯し、巧まずして生み出す緊張感。いや、その巧まぬという思いを抱かせるところが、彼らのアートなのか。

 夢人間のメンバーは、やがてまた、何事もなかったように、自然生(じねんじょ)を呼び寄せ、ステージ中央の奥へ消えていった。大小様々な太鼓と笛、それに竹や鉄のパーカッション。どれも素材そのものの音が生かされ、目の前に田園風景が広がる思いで見、聞き入った。

 私自身は、子どもの頃を含めても、別段、村祭りや太鼓の祭りを体験したわけではない。それなのに、自然生の響きには、何かしら懐かしさを覚えた。彼らが土と共に暮らす中で作り上げてきた音の故でもあろうか。休符ではなく間としか呼びようのない音の空白のたび、曲のテンポが自在に変わり、気が付かないうちに体と心が揺れ始め、だんだんその振幅は大きくなる。実にユーモラスなメンバーのスムーズな動きからは、レベルの高い演出が十分にこなされていることが物語られている。洗練された素朴さとでも言うべきか。


・ギャーテーズ・EKO

 司会の小室さんもグループの紹介だけでなく自らギターを抱えて登場。信楽青年寮を舞台にした映画の主題歌「ここから風が」と武満徹の「翼」の2曲を披露した。

 「翼」では、楽器とマイクを手にして、音楽する事で羽ばたこうとする、今日のフェスティバルに参加したグループへの、プロのミュージシャンからのやわらかなメッセージを感じて、胸がきゅんとした。

 「遙かなる空に描く 自由という字を」司会の横でずっと手話通訳をしてくださった木下さんの巧みな手の動きが、このときばかりは意味を伝えるばかりでなく、歌のイメージを一層膨らませてくれた。

 ギャーテーズ。3人の清僧さんのうちふたりはフロントで雄叫びをあげる。たびたび、客席にも降り、文字通り、そこに居合わせる全ての人がふれあい、一体となる音楽のメッセンジャー役を見事に果たしている。フリージャズとでも言えばよいのだろうか。音が音を呼び、重なり、引き合い、大きくうねる。背景に高く掲げられた清僧さんたちの手になる曼陀羅同様、めくるめく音の供宴がいつ果てるともなく続く。知らず知らずのうちに身を固くし、やがて力が抜けていく。最後の般若心経には、祈りよりは音楽そのもを感じ大いに楽しめた。

 そしてEKOの登場だ。今日のこのステージのためだけにはるばるスウェーデンから駆けつけたEKO。最初の音が鳴るやいなや、もう紛れもないEKOの世界。ステージ下のスペースはあっという間に歩み出た観客で埋め尽くされ、初めからハイテンション。
 この光景、EKOと観客の熱いやりとりも、日本でももうおなじみのものなのだ。言葉は全く分からない外国の歌なのに、すんなりと私たちの胸に入り、心が躍り、知らずに立ち上がり、手を打ち、体を揺らす。 EKOの曲が進むにつれ、これまで、出演者だった人たち自身が衣装やメイクもそのままに、次々と楽屋から出てきて、観客と共にEKOのロックに歓声を上げ、拳を挙げ、大きなうねりを作る。

 演奏が終わっても興奮は高まるばかり。アンコールでは、出演者全員がステージを埋め尽くし興奮は最高潮に達した。きらめく音とほとばしる汗の乱舞が、解き放たれた魂のエネルギーのすさまじさを見せつける。熱い興奮の中、全てのステージは終わった。


・響きあいの余韻

 出演したグループは、音楽のジャンルも全く異なっている。しかし、そこには共通のパワーとそこにいる人々をひととき自由にさせる何かがある。音楽であれ、何であれ、自分を表すのに、ジャンル分けなど元々いらざる枠付けなのだろう。ハンディキャップを音楽を作る制約ではなく、プラスに転じる自由さこそ、今日のフェスティバルのキーワードなのかも知れない。

 恐らくは、それぞれのグループ結成や日頃の活動にまつわる素敵なエピソードには事欠かないに違いない。だが、今日のステージで目の当たりにしたパワフルな姿は、それだけで何の付け足しや解説もいらない。私たちの身近にもこんなにも、たくさんの素晴らしいグループが育っていたのだ。

 響きあうということ。それは、どこかで誰かが仕組んだ通りに、協調してみせるのとはまるで違う。あくまで自分自身を表現し主張する中でこそ、お互いがぶつかり、混じり合い、自然の共鳴が起こるのだ。その意外性の連続に素直に驚き、揺さぶられ心地よい興奮が会場を満たした。

 このどよめきとうごめきの中から、また新しい何かがどこかで生まれていくのだろう。もしかすると、それはもうあちらこちらで始まっているのかも知れない。


・参加者からのメッセージ

・純粋に心の奥底から感動しました。

・心が揺さぶられ久しぶりに興奮しました。


・自由で気取らず心のままにそしてあたたかく音色が身体の中にしみこむようでした。

・いやあ、いいですね。バイブレーションというか、気持ちの高まりが心地よいです。

・演奏中一緒に演奏したくなった。

・あくまでも自由でとらわれることなく楽しむ姿に音楽の真の姿を見る思いでした。

・音楽には国境がないのが再認識されたのと同時に、障害の有無にも違いがなく共通して音楽の持つ偉
  大さを知った。

・どのグループも完成度が高く感じられました。知らない内に引き込まれていってしまうような。

・どのグループもストレートに体の中に響く。

・時間がとても短く感じられ、よかったです。

・音楽を 通して一つになった時間が過ごせて楽しかった。

・コンサートが始まるまでは余り期待もなく座ってい ればいいと考えていました。しかしMyDoが
  始まったときからその甘いばかな考えがなくなりました。こんな感動したコンサートは初めて。

・無意識に叩き出した手拍子が演奏の一部になって響きあえることがとても嬉しかった。こんな感覚初
  めてです。何のこだわりもない解放された私がいることに気付かされました。形じゃない内からわき
  上がるものを素直に真っ直ぐに響かせるその力強さは私の内面の深いところに届き、目頭が熱くなっ
  ていました。ええかっこしいで最後の最後でひよってしまう私の 弱さを問われているような気さえ
  しました。それは演じている彼らが生きている喜びを何のとらわれもなく精一杯表現しているからな
  のでしょう。素晴らしいメッセージをありがとう。

・プロとしてやっていく一つの形としてこのコンサートを受け止めます。

・いろんなことやって、いろんな風に生きている人がいるんだと思いました。最後は本当に盛り上がっ
  たね。

・生きている素晴らしさを教えられた。

・これほどに感動したのは余り今までなかった。次回も楽しみにしています。

・後半の盛り上がりにとまどいつつ驚いた。

・私たちは譜面の再現など音楽に型から入ってしまいがちだが、音楽や表現の原点は、魂や心を音で表
  現しようとするものである。それを感じさせるステージだった。

・パワフルですごかった。音楽観が変わりそうす。

・障碍者の方の表現力あふれる活動のいろんな形にふれられてよかったです。

・とても心に訴える何かがありました。そしてとてもショックでした。これからも頑張って続けて欲し
  いと思います。

・ものすごくパワフルでびっくりした。音楽って障害は全く関係ないと実感した。

・一杯元気もらいました。明日からも頑張ろう!

・静かな音楽が好きなのでちょっとびっくり。でもみんなからパワーをもらって帰ります。次はスタン
  ディングしたい。

・計算された動きではなく本当に自然にからだが動き声が出るといった感じがしました。

・ともかく理屈抜きで楽しんだ。

・出演者と聴き手が一体になって盛り上がっていることが印象的。

・私も彼らと一緒に音楽がやりたい!

・予想以上の感動・・・・驚きとため息のコンサートでした。最後はみんなが一つになり音楽を体で
  楽しめよかったと思います。


・奏年隊の3人からもメッセージ 

・  EKO響きあいのフェスティバル10215、五反田へいきました。本当にハーモニカを吹いてよか
  った。童謡と歌謡曲とクラシックとオーケストラを吹きました。北海道から沖縄まで全部吹きます。
    奏年隊の窪島君と井原君と健太郎君は頑張りますから、どうか一つよろしくお願いします。また大き
  い会場で演奏したいです。本当にありがとうございました。エレキギターテケテケひきます。

                 窪島克己


・   行った翌日から(前日から行きました)緊張しました。ごはん(パーティのこと)が楽しかった。バ
  イキングがよかった。一人一人紹介されて名前をいいました。
 行った日から(ホール)で仲間が出来てよかった。ラジオで生で出られて、楽屋に行ったときから手
  のひらに汗をかきました。
    本番は緊張して声が出ませんでした、みんなほめてくれたけど・・・。
    また別の所でも演奏したい。 緊張しすぎてしまいました。他の演奏者もよかった。特に踊りがよか
  った。 これからももっとやりたい。いろんなところでこのようなことをやりたい、急にはできない
  けど。      
                                  井原芳哲(よしあき)

 
・   私たち3人の演奏を広い会場でどこまで表現できるか、出演が決まったときからとても不安でした。
  しかしいつも通りの演奏をすることに意義があるのではないか思い、当日まで特に考えずフェスティ
  バルに参加したのですが、他の出演者のリハーサルを見てびっくり(レベルの高さに)。頭が真っ白
  な私を尻目に、窪島さん、井原さんはハーモニカを吹いたり昼寝をしたりスタッフと話をしたりいつ
  も通りのペースではないですか・・・。私も開き直り、いつものようにいこうと・・・、支援者のつ
  もりで参加したのですが、またしても2人にやられてしまいました。

    フェスティバルに参加し、色々な反響をいただきましたが、私たち奏年隊はいつどこでも普段通り
  の演奏をしていくという姿勢を崩さず、これからも楽しんでいきたいと思っています。最後になりま
  したが、このような交流は続けていきたいと思います。素晴らしいフェスティバルに参加させていた
  だき、ありがとうございました。     
                                  上條健太郎


・スタッフ・ボランティアに感謝

 実に多様なグループの多様なパフォーマンスを手際よく、しかもおのおのの魅力を最大限引き出した、演出、音響、照明のプロフェッショナルな仕事には、心からの敬意を表したいと思います。彼らの「よいステージだった」の一言には、準備を進めながらため込んできた不安とストレスが一気に報われたようにも感じました。

 また、このフェスティバルには、当日はもちろん、ほぼ半年間に渡って、多くの団体や個人の計り知れないエネルギーが傾けられたことも、感謝を持ってご報告します。この響きあいが、新しい様々な活動の出発点となることを願ってやみません。

 


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