森と川と白夜の町

オーベルカーリックス

 

 

概要

  オーベルカーリックスは、スウェーデン北部ノールランド地方・ノールボッテン県の中央、バルト海から約70km程の内陸にあり、北極圏線の真下、広大なラップランド地方独特の大原野に囲まれています。

  スウェーデン北部の町は、昔から川や海沿いに発展してきましたが、オーベルカーリックスも、キルナの山中からバルト海に注ぐカーリックス川と、またカーリックス川に沿って流れるエンゲス川との合流地にあります。

  この地域の北西の地域には昔からサーメ人(以前は、ラップ人と呼ばれていました)が住み、また北東地域にはフィンランド人が住んでいましたが、1300年代頃、カーリックス川を上って来たスウェーデン人が、大自然の広陵に囲まれ、二つの大きな川が合流するこの場所に入り、開拓を進めて来ました。

  この地方では、昔はそれぞれ他の地域との交流は少なく、河川が他の地域との唯一の交通手段として使われていました。そのため、オーベルカーリックスには「ボンヅ方言」という独特の方言があり、現在でも特に年配の人の間では、スウェーデン標準語よりこの「ボンヅ方言」が使われています。

  この地方の産業は昔から農業、林業が主体でしたが、近代になって機械化が進み、また国の近代化とともに人口は都市へと流れて、60年代から70年代には急激な人口の過疎化が進み、1960年には9000人近くあった人口も、現在は半減しています。

 

 オーベルカーリックス市街


面積と人口

  オーベルカーリックスは、面積が2770 平方km、ノールボッテン県自治体の中では、14の市町村自治体(コミューン)の中で9番目に大きい自治体です。人口は、4470人。このうち約2200人が、ブレンナ、グレルスビン、ラルヴィークなどコミューンの中心部に住み、「ブレンナ」と呼ばれる市街地はまた、コミューンの商店や行政などが集まる「センター」にもなっています。

  コミューンには、この他ジュリエン、ヨックファル、キュパスヤルヴィ、ランズヤリヴ、スヴァットビンなどの集落村があり、それぞれ200~600人の人口があります。


自然

  北極圏までわずか50kmというこの地方の冬は長く、5月の末までは雪に埋もれていますが、6月になると一気に夏になります。夏は「真夜中の太陽」と呼ばれる白夜の季節で、一日中太陽は沈みません。

  冬はまたこの逆で、日中数時間明るくなりますが、夜が長く感じられます。北極圏間近で見る夜空には無数の星がきらめき、気温の低い晴れた夜空には、オーロラが輝きます。

  北欧の夏は湿気がないため、この地方でも夏には30度を越える気温になりますが空気は乾いてしのぎ易い気候です。無数の湖や湿地帯の多いこの地方には蚊が多く、原野や森を歩くと蚊の大軍に出会うので、虫除けスプレーが必要になります。

  冬はまた厳寒となり、時には零下40度にも下がることがありますが、北欧独特の寒冷地住宅の中は、常時暖かい気温を保っています。

                                                       

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産業

  オーベールカーリックスの産業は、昔から林業・農業が中心でした。社会や産業の近代化によって、木材を利用する製造業も盛んになりましたが、過疎化が進み人口が減少してからは地域での活性化に取り組み、現在では観光や情報産業にも力を入れています。産業の競争原理に対応するため、1994年には、それまでコミューン(自治体)が行っていた産業の促進事業を民営化して促進会社を設立し、その結果1997年度の会社設立数が、ノールボッテン県において最高の増加率となりました。

  オーベルカーリックスには、企業団体として全国企業団体連合(FR)の他、オーベルカーリックス商業連合会と全国農業連合会(LRF)の3つの団体組織がありますが、この3つの組織を連結した「オーベルカーリックス企業グループ」という任意の団体が設立され、地域での企業の成長を促進するため積極的に働きかけています。

 

職種別企業数及び従業員数

職種

企業数

従業員数1名以上

5名以上

10名以上

株式会社数

農業、狩猟

林業

16

13

製造業

41

33

12

電力、ガス、光熱

建築

29

24

10

車両販売、ガソリン

17

14

卸販売

小売り販売

42

34

10

ホテル・レストラン

17

12

10

運送

22

19

10

旅行(旅客・貨物)

金融

土地・建物管理

レンタル

コンピューター

その他の企業サービス

19

15

教育

健康・保健

レクレーション・文化

その他のサービス業

合計

260

213

28

12

79

 


木工産業

  最近の産業調査によれば、この地域での木材産業の発展には、従来の木材産業の構造の中で特に家具・建材などの製造の発展が望まれるということです。そのため、木工産業への投資が行われ、生産の近代化・製品開拓などに力を入れています。

  従来はいわゆる家具などのコンポーネントの製造が主でしたが、最近では木材(主として松材)の接着剤、加工品などの製造にも力が入れられ、海外への輸出も増加しました。

     Samhall(サムハル)は、元々機能障害を持つ人たちの就労の場として全国各地にある各種の福祉工場ですが、オーベルカーリックスにあるSamhallでは80名の従業員が、年間10万個以上の家具を製作し日本などへの輸出も多く、総売上額は55億円にも達し、この地域でも大きな企業の一つとして地域に貢献しています。

  木工産業の活性化は、企業同士や他の地域とのネットワーク作りにも見られます。オーベルカーリックスにある、木材に関しての材料から製造過程にいたるノウ・ハウを、他の地域や企業との提携によって資源を有効に使う試みがなされています。


  現在、一般的にスウェーデンの家具製造業者が直面している問題は、製品を販売するルートの開発です。多くのメーカーは、独自の製品名として販売するには資金面などで困難を抱えており、製品の流通を既存の販売業者か家具販売チェーン店に依存しています。この事は、製造業者がそれら販売会社の下請けに留まることにもなりますが、一方では独自の販売よりもデザインや営業に関する費用が少なくてすむ利点もあります。そのため、オーベルカーリックスの業者は、スウェーデン国内はもとより、デンマーク・ドイツなどにもこのような流通ルートを開発し、この地域での良質な家具・木工製品産業の確立に力を入れようとしています。



日本などへの輸出

  1997年度には、福祉工場でもあるSamhallが、1500個の椅子などの家具を日本へ輸出しました。この数字はこの地域でも大きなもので、他の家具製造業者の日本への輸出にも関心が高まりつつあります。

  家具製造企業としては、先にあげたSamhallの他、Trapaneler株式会社など数社ありますが、家具の他にも、材料接着剤製造のFurufog株式会社、またあらゆる建物での建材システムを製造しているIsolamin株式会社、さらにログハウスや小住宅建設のAndersson 木造建築株式会社など、木材建設に関してのいろいろな分野の企業があります。

  木工産業の他にも、特殊トラックや飛行場・鉄道や工場などでの特殊車両の製造を行っているLM工業株式会社、また野生の草の実(ベリー)などの飲料水製造業者など、この地域独特の産物などもあります。

  この地域は昔からブラックベリーの産地として有名ですが、ブルーベリーは日本やイタリアにも輸出され、目薬の成分にも利用されています。



地域の活性化

  スウェーデン北部の地方は60年代より過疎化が進み、若い世代の住民は都市部に移動して稼動人口が減少しました。また人口が都市に集中するにつれて産業投資も都市に集中し、北部の地域の経済状態も80年代まで下降する一方でした。このため産業の構造改革や地域の資源を改めて見直し、その資源を活性化する試みが行われました。
  オーベルカーリックスでは、それまで産業促進事業は自治体が運営していましたが、
94
年にはそれを民営化するため自治体が出資して促進会社を設立し、企画や産業の分析、企業支援プランなど、自治体との協力によって地域の活性化を行ってきました。

  その結果、情報産業など今までになかった分野の開発も行われ、地域の資源をフルに活用するためのインフォメーションセンターの設立や、またそれらと教育機関との提携によって、能力向上のための研修や教育などに力を入れています。



主な教育・研修プログラム

知識ステップアップ教育:成人学校教育の一環として行われる。対象は、高校に入学していなく
                       現在失業しているか、あるいは就業しているが継続して就業するた
                       めの教育を必要とする人。教育期間
5年。

観光とガイド教育:サービス業や観光資源、及び小企業に関する教育。オーベルカーリックスや
                 原野についての知識、旅行ガイドや各種の企画の研修等。教育期間
1年。

企業・営業教育:個人能力の向上、企業管理、業務、経理など。スウェーデン国語、数学、
               社会科、英語などの基礎知識も含む。
教育期間1年。

 

  その他、原野での資源探索・開発プロジェクト、史跡研究プロジェクト、ロシアのムルマンスクとの文化交流プロジェクトなど、民間の企画やプロジェクトを基盤として、それらへの支援・促進により地域の活性化を計っています。

 

冬の街角



福祉ケアとサービス

  スウェーデンにおける福祉政策は、医療などに関しての「保健・医療法」、高齢者、や機能障害者、さらに一般市民が受けるサービスなどを規定してある「社会サービス法」、さらに社会サービス法と並んで、知的障害や自閉症を持つ人、長期的な精神障害を持つ人たちの権利法ともいえる「LSS法」などによって、国・県・コミューンがそれぞれの管轄と責任を受け持ち、サービスの提供を行っています。

  それによって、国は法律の制定や社会保険などの支給、県では医療やリハビリテーション・ハビリテーションのサービスを提供し、高齢者や機能障害を持つ人を含めた一般市民へのサービスは各自治体(コミューン)が担当しています。

  これら行政が提供するサービスの評価や監視は、例えば国全体に関しては社会庁、またそれぞれの地域に関しては県自治体が持つ自治体庁が行い、さらに「オンブズマン制度」によって、サービス受給者である市民の権利が擁護される仕組みになっています。また、法律の起案や行政サービスの提供にあたっては、サービス受給者の団体が参画し、受給者の声が反映されるようにもなっています。



オーベルカーリックスの福祉サービス

  オーベルカーリックスの福祉サービスは、コミューンの社会局が担当して、高齢者と機能障害を持つ人、また個人・家族ケアの二つの部門でそれぞれのサービスを提供しています。コミューンでは、人口約4500人に対し、年間約12億円の予算がこれらのサービスに使われています。この中では、やはり高齢者・障害者へのサービス費が主流を占めますが、個人・家族ケアに関しては失業問題や一般的な社会経済減少による不安なども絡んで、これらへの経費が増えてくることも考えられます。

 

高齢者福祉サービス

タルヴィークス・ナーシングホーム:特に医療ケアを必要とする高齢者のホーム。 定員53名。
                                                                        3つの棟に別れ、一つはリハビリ・医療の場がある。

ブレンナゴーデン:ケアのニーズは大きいが、まだ機能能力が残っている高齢者の

老人ホーム:ここには定員9名の、痴呆性老人にためのグループホームもある。


  ここオーベルカーリックスでは、高齢者の多くは在宅しており、必要があれば介護ヘルプサービスを受けて暮らしています。



知的障害を持つ人へのサービス

  スウェーデンでは、80年代より法律によっていわゆる「入所施設」は閉鎖され、知的な障害を持つ人は、グループホームかそれぞれの住居に住むようになりました。

      94年にはLSS法によってパーソナルアシスタント(個人の介助ヘルプ)を要請することが権利として保証され、グループホームには住まなくても、パーソナルアシスタントの援助を得ることで、家庭や自分の住宅で生活出来るようになりました、

  この地域では、最重度の障害を持つ人もグループホームではなく街の住宅地に住み、日中はデイセンターで日常活動を行い、家ではパーソナルアシスタントの援助を受けながら生活しています。現在、約30名がLSS法の対象になっており、7名のパーソナルアシスタントが2つの住居(アパート)で24時間のサービスを行っています。

                               

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    グループホームとレスパイトの家と、グループホームの居間      

 

ラルカンス・デイセンター:利用者20名、職員は所長を含めて4名。ここでは、授産作業から、重
                         度の人も含む日常活動を行ってます。職員は、週に
2回、利用者の
                         住宅訪問も行ってます。

グループホーム:7つの住居がある建物。この建物には、2〜3名が宿泊出来るショートステイ
               の設備があり、合わせて
12名の職員がローテーションにより24時間体制で日常
               的なサービスを行っています。

  オーベルカーリックスには、この他福祉工場のSamhall(産業の項目参照)があり、約80名が就労して家具を製作し、日本にも輸出するなど地域での産業発展に重要な役割を果たしています。

  ハビリテーションは県の管轄になり、専門職などのチームとの連結はウメオ、カーリックスなどの近郊都市とのコーディネートによって行われます。

 

文化、余暇とリクレーション

  オーベルカーリックスは、何十kmもわたる緑の大森林に囲まれ、カーリックス川・エングス川はスウェーデンでも最良の鮭釣り場、そして最も自然が守られている川としても知られています、また市街地やその周辺には、スキー場や夏場でのローラー・スキー練習場、また屋内スポーツ場やプールなどの施設があり、市民のリクレーションはもとより、各種スポーツの合宿練習などに利用されています。

  公民館Folkets Hus(フォルケッツ・ヒュース)では、演劇や展示会などが観覧出来ます。Folkets Husは全国殆どの町にある公民館・集会場ですが、オーベルカーリックスの公民館は、全国公民館組織によって97年度ベスト映画館に選ばれました。

  オーベルカーリックスはまた、各種の協会(NPO)活動が盛んで、乗馬クラブや各種のスポーツクラブ活動、さらに政治研究会などにいたるまで市民がクラブ(協会)を作り余暇活動を行っています。地域では、これらの団体が主体となって、いろいろな催しが年間を通して行われ、地域全体が住民の憩いの場所ともなっています。

 

主な見どころ

 

ヨックファーレット(ヨック滝):カーリックス川、街の郊外にある高さ9mの滝。ここは鮭釣
                              りにも最良で、時期になると鮭が急流を上るのも見られます。

ブレンナバリエット:市街の南側にある、小高い山。ここからは市街や市街を囲む二つの川や周
                   りの原野が一望出来、、山頂にはダンス場やカフテリアなどがあり、白夜
                   の時期には有名なダンスバンドなども出演して大ダンスパーティーが催さ
                   れます。

リルバリエット:市街から約12km6000年前の石器時代の遺跡。

北極圏:主要道路が北極圏線と交わる所には、それぞれ休憩場・ドライブ・インがあります。
       こに到着した際には、北極圏通過の証明が貰えます。


  この他、
200年前の民家を保存した「マーティンゴーデン」やロシア教会、その他絵画や工芸・手芸の展示会などが図書館などで開催されます。

 


各種の行事(主なもの)


3月 スノースクーター競技:スウェーデンやフィンランドなどのエリート選手による競走。

4 トナカイ競走:スウェーデン・フィンランド・ノルウェーから選手が参加。トナカイの後ろで
                 手綱を引き、スキーで滑る競技。

6 ブレンナバリエット・ダンス6月半ばから夏場に毎週開催。

7 夏の市:市街全体にまたがる市が立ち、遠方からも多数の人がこの市に集まる。昔からの伝統
           的な商いの場でもある。この市に合わせて、音楽祭など各種の催しも行われる。

   鮭の日12時間にわたり、一番大きな鮭を釣り上げるのを競う。

8 川の日2日間にわたり、カーリックス川沿いのあちこちで船に灯をともす。その他、いろい
           ろなアトラクションがある。

10 ミカエリ市:文化祭やアトラクション。


  この他、各種の余暇、スポーツ、芸術・文化、趣味などの団体が、それぞれの協会を通していろいろな活動を行っています。

 

その他の事項

 


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