スウェーデンにおけるFUBと

知的障害を持つ人たち

 

FUB全国連盟理事会

前会長 エライン・ヨハンソン


  FUBは、知的障害をもつ児童、青年、成人のそれぞれが、豊かな生活を送る事が出来るために活動を行う、非営利団体です。FUBは、正式には「知的障害児童、青少年、成人のための協会」という名称で、1952年ストックホルムにおいて設立されました。


FUBの組織

 FUBは、スウェーデンにおける行政のシステムと同じ仕組みで構成されています。 現在会員は約35000人で、全国288市町村(コミューン)の中で175の地域に地区協会があります。つまり、いくつかの市町村をまとめた地区協会もあるという事です。

  将来的には、各市町村に一つの地区協会組織を持つという事も、FUBの活動目標の一つにあげられています。また、全国25の県自治体に、それぞれ県単位の理事会があります。政治の中心に政府と国会があるように、FUBもストックホルム市に全国連盟理事会があります。3年に一度、各地区協会と県理事会の代表が集まり、全国連盟理事会会長と理事会の役員が選ばれます。理事会の役員は、全国各地から知的障害を持つ人たちが生活を送る中でのいろいろな知識を持つ人たちです。会員のほとんどは、知的障害を持つ本人かあるいはその家族の人たちですが、その他にFUBの趣旨に賛同する人たちも会員となっています。


FUBの活動

FUBは、市町村、県自治体、国会や官庁など社会のいろいろな領域の中で、知的障害を持つ人たち
          の利害や権利擁護を監視しています。

FUBは、会員とまわりの社会への広報を行っています。

FUBは、会の家庭相談員や弁護士、またオムブツマンなどにより、会員への支援を行っています。

FUBは、青少年のキャンプや学習、または会議など、会員へのいろいろな活動を提供しています。

FUBは、「FUBコンタクト」、やさしい広報誌「ステーゲット」の2種類の会報誌を発行してい
          ます。

FUBは、研究機関ALAや他の研究者と共に研究活動を行っています。

FUBは、全国障害者連盟協議会やインクルージョン・インターナショナルなど他の障害者団体組織と
          の協調と活動を行っています。


政治的な活動

 この5年間、FUBは知的障害を持つ人たち自身に有利な法律が出来るよう働きかけて来ました。これには、知的障害を持つ人がそれぞれの立場で、国内の全ての人たちと同じように生活する事が出来るように、という考えが基盤となっています。子供たちは両親と一緒に育ち、また機能障害を持つ子どもを育てる親には支援が必要です。知的障害を持つ子どもは、一般の子供たちと一緒か、または養護学級において教育を受けます。

  知的障害を持つ成人は、日常の生活で生きがいのある活動が出来、また親から離れて生活したり、出来る限り自分なりの生活を営みます。これらに関しては、市町村がその支援を行う事になっています。

  1994年1月1日、LSS法(機能障害者に対する、サービス・援護法)が制定されました。この法に関しては、FUBをはじめとする他の障害者の団体との働きなしには、この法が国会において成立する事はなかったともいえます。このLSS法は、重度な機能障害を持つ人たちが、アドバイスや個人的な支援、パーソナルアシスタントやコンタクトパーソン、レスパイトサービスやショートステイ住居、子どもや青少年、成人のための特別のケア、また成人の日常活動へのサービスを受ける権利を保証する支援法という性格を持っています。

  FUBは、パーソナルアシスタントというものの権利を得るために、15年以上にもわたって運動をして来ました。私自身の、27才になる最重度の重複障害を持つ娘ピアは、パーソナルアシスタントによって24時間のケアを受けています。この法が出来た事により、彼女は家から外出したり、自分自身の住居で生活が出来るようになり、また自分自身でパーソナルアシスタントを選ぶ事も出来るようになりました。パーソナルアシスタントを得る事によって、最重度の機能障害を持つとはいえ、支援によって自立した生活を送るという事が可能になりました。

  この法によって、知的障害を持つ人への支援とサービスは市町村が行う事になりましたが、市町村は日常的にこの権利法を侵しており、時折知的障害を持つ人がその権利擁護を裁判所に持ち込む事があります。知的障害を持つ人がその支援を得る事が困難になる理由としては、失業者の増大など現在スウェーデンの経済情勢が悪いという事があげられます。知的障害者への社会援助で経費が削減されるという事は、それによって被害を受ける人もいるという事です。


地区協会への支援

  地域の協会で、代表者が地域の政治家や行政職員などに働きかける場合、情報やそれなりの学習が必要になります。そのためFUBでは、住居や日常活動、文化や余暇活動などいろいろな分野において、研修会や会議、さらに各種の情報資料の配布など各地域の協会に対する支援を行っています。研修や会議などでは、対象として年代の若い親の人たちや、また障害を持つ人たち自身など、いろいろです。


本人の会全国連盟「クリッパン」

 ここ20年来、FUBは意識的に、知的障害を持つ人自身がFUBやまわりの社会で影響力を行使出来る可能性を追求して来ました。FUBが、いわゆる「親の会」と呼ばれたのは、随分昔の事です。知的障害を持つ人たちは、その間、自分たちに関わりあう問題について参画して、自分たちの意見を述べて来ました。

  1995年5月、知的障害を持つ人達自身が理事となり、独自の活動目標や予算を決定する本人の会、全国理事会クリッパン(岩盤)が結成されました。クリッパンの初代会長に選出されたオーケ・ヨハンソン氏が就任の挨拶で述べたように、まさしく「歴史的な瞬間」でした。

  クリッパンの大切な役目の一つは、各地域での協会に本人の会が出来るよう働きかける事です。現在では、約60個所の地区協会で本人の会が活動しています。

  FUBの活動は、地域あるいは全国レベルでの政治家たちの間では良く知られているとは云え、一般的にまわりの社会は、知的障害を持つ人たちについて良く知りません。

  しかし、社会の中で知的障害を持つ人達が外に出て実際に目に付くようになるにつれ、まわりの意識も変って来ます。現在では、一般のスウェーデン人はほとんど日常的に、知的障害を持つ人達と出会っているでしょう。


(この記事は、全日本育成会の広報誌「手をつなぐ」98年発行1月号 No.503に掲載されたものです)

 
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